2020年9月4日金曜日

映画『九十九本目の生娘』

NEW !

国際放映  新東宝キネマノスタルジア  DVD
2020年9月発売



★★★★★   大河内常平の原作本も読まれてほしい



待望の初DVDだが、私の視聴対象は先行してTV初放送された日本映画専門チャンネルのオンエア録画分なので、販売されている商品のレビューではないから、念の為。

 

 

戦後の東北地方。日本のチベットと呼ばれている岩手県北上川の上流で、東京から来た若い女性二人が行方不明に。山奥の部落で十年に一度行われる、奇妙な迷信のある ❛ 火造り祭 ❜ の日が近づく中、神社の宮司・弓削部(沼田曜一)はこの部落に昔から生息する舞草一族の長老(芝田新)から「部落以外の人間はすぐに下山せよ」と告げられる。

 

 

そして 火造り祭 ❜ の日。誘拐されていた二人の女性は舞草一族によって半裸で木に吊るされ、刀で貫かれて亡きものにされる。処女の生き血はこの部落に伝わる妖刀のエキス(!)にする為の供物だったのだ。青年警官・阿部政之(菅原文太)達は部落と妖刀の因縁に辿り着くが、舞草一族は次なる生贄として弓削部を慕っている部落の娘・あざみ(松浦浪路)、そして阿部の上司である及川署長(中村虎彦)の娘・加奈子(矢代京子)を次々と生け捕る。



                   




ストーリーはコンパクトで、冗長な部分も無く面白かった。昔出たビデオ・ソフトは音声が一部消去されたり画質悪かったりで散々だったらしいが、このCSオンエアを見る限りそういった欠点は無い。宣伝ポスターに見られる誘拐された生贄女の水車磔は本編には無いし、長老が生贄女を刀で突き殺すシーンだけは何故か音が無くなって、断末魔の呻きは聞こえなくなるけど。




私はこの映画を見ても、岩手の山奥に住む現実の人達が狂っているだなんてアホな考えは微塵も起きないが、そういう時代錯誤なことを考える可哀そうな人達ってまだ世の中に存在しているのかねえ? 「キチガイ」「日本のチベット」とかいうセリフは確かにあるしカラーなら流血シーンが陰惨に見えるかもしれないけれど、白黒だから目をそむけたくなる程のインパクトではない。若き日の菅原文太はのちの任侠っぽさが全然無いのも非常に好感度アップ。

 

 

こうやって日本人社会の根深い害悪である〈作品自粛〉は少しづつでも解き放たれなければならない。 

 


(銀) 当Blogで大河内常平の原作よりも先に映像についてupすることになるとは思ってもいなかった。『九十九本目の生娘』しか知らない人には是非ミステリ珍本全集 ⑦『九十九本の妖刀』も買って読んでほしいなあ。猟奇スリラー映画ではあるが日本のアニミズムみたいな風習も描かれているので『南総里見八犬伝』が好きな人にも興味を引く要素がきっとあるだろう。そうだ、明日は八犬伝でも取り上げてみるか。