2007年5月発売
★★ プロ未満か アマチュアか
戸田巽は関西/神戸出身。
地元の三越百貨店に勤務しながら執筆活動を行うも、戦前の『新青年』や戦後の『宝石』で頭角を現すことができず、『猟奇』『ぷろふいる』のほか同人・マイナー・ローカル誌中心の活動となる。
「幻視」「深夜の光線」「ビロードの小函」「詰問」「色眼鏡」「狭き門」「川端の殺人」「隣室の男」「双眼鏡殺人事件」「夜汽車の男」「もうひとつ埋めろ」はショートショート、もしくはそれに準ずる小品。
怪談もので知られる映画監督・中川信夫とは学生時代から深い交流があり、
デパートメント、あるいは中川らしきキャラを扱う内輪ネタが、前巻『 Ⅰ 』も含め幾度となく見られる。「朝顔競進会」もデパートが舞台。この辺の似たネタ繰り返しは、いかんせんアマチュアっぽい。
華族の姫に恋した男が舞台下の床穴で悲劇の泥沼に陥る長唄物の「踊る悪魔」は書きこむ枚数があと少し足りず、「悲しき絵画」は悪魔趣味がネットリ活かされるまで行ってなくて惜しい。「ギャング牧師」はキャッチコピーとしてのタイトルは秀逸なのだけど中身はと言うと・・・・あきまへんな。「屍体を運ぶ」も江戸川乱歩や横溝正史がやりそうなネタを一捻りするのはいいが、どうにも短すぎ。「湖上の殺人」「人形師」も同様。
「落ちてきた花束」に出てくる大阪の街並みにはちょっとグッとくる。斯様に阪神地区の都市描写でもガッツリなされていれば、「二科展出品画の秘密」「第四の被害者」「鉄に溶けた男」のようにトリックが甘かろうとも評価を上げたのに。「運の神」「続
運の神」は未完の作。
『 Ⅰ 』から本書『 Ⅱ 』と読んでも、これという作風の特徴が見つからず、関西の探偵作家たち(西田政治・山本禾太郎・酒井嘉七・香住春吾・島久平)について述べたエッセイの方がずっと面白い。今まで一度も著書を出してもらえなかったのも、これでは仕方ない。
(銀) さして言いたいこともなく中川信夫の話などでお茶を濁している。このレビューを書いた頃は、初めて単行本一冊に纏められる作家だったらどれだけガッカリする内容でも、よっぽど理不尽なことでもない限り、論創ミステリ叢書をプッシュし続ける気持でいたから、必ず☆5つにしていたものだ。だが巻数が増え担当者の質も変わり、今の論創社を無条件に信じることはできなくなった。だから本書も、当時は☆5つにしていたのを☆2つへ変えたというわけ。