2020年6月25日木曜日

『横溝正史研究〈創刊号〉』

2009年5月6日 Amazonカスタマー・レビューへ投稿

戎光祥出版 江藤茂博・山口直孝・浜田知明(編)
2009年5月発売



★★    もっと資料性の濃さとセンスが欲しい



~ 特集 金田一耕助登場 ~


)    金田一耕助の変遷 

)  古谷一行インタビュー 

)  論考 金田一耕助の恋愛・食生活・アメリカ・探索・金銭感覚・探偵事務所・

    パトロン・語り手・戦争体験・探偵方法 

)  鼎談・観てから読む横溝正史 

)  横溝正史旧蔵資料紹介 

)  横溝正史年譜事典 

)  自由寄稿 

)  横溝正史ネットワーク

 

 

) はホームズ研究本に見られる手法だし、5) ) などなかなか興味深いのだが・・・創元推理倶楽部秋田分科会の横溝正史同人誌ほどには満足感が得られなかった。映像はあくまで小説の副産物であり 、2) ) のような映像礼賛は他の企画でやった方が良いと私は思う。巻頭の杉本一文によるカバー絵頁にしろ、本書を買うような人は旧角川文庫を殆ど所有し見慣れているのだから今更という感じ。初出誌挿絵を配置しているのは良い。次号以降でより多くのレアな挿絵大特集が見たい。

 

 

専門的な指摘になるがレイアウトの見せ方とか編集の手法が幼いのかもしれない(西田政治の写真キャプション、明治昭和の間違いだろ?)。二松学舎大は正史に関してまだまだビギナーなのだから、裏方に回ってプロに旗振りを任せたほうがいい。まだ一冊目でもあるし見方が少し厳しすぎたかもしれないが、期待していることに変わりはないので巻を重ね一層の充実を望む。

 

 

 

(銀) 手堅く、もっとも知名度の高い金田一耕助の特集から手を付けているのだが、もしセンスが良く能力のある作り手が揃っていたなら、もうちょっとマニアックな切り口から始めていたのでは、と想像する。なんか悪い意味での〝素人〟感がプンプンしていて、いきなり次号に不安を抱いたものだ。こういうものは一発目から内容が充実していなければ、その後徐々に良くなってくるなんてことはまずありえない。そしてその危惧は次号でモロに的中する。