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Kino Classics Blu-ray
2014年7月発売
★★★ ブレイク目前のアンナ・メイ・ウォン
本盤には「Drifting」のカップリングとして、同じ年に(1923年)公開された「White Tiger」も収録。主演プリシラ・ディーンと監督トッド・ブラウニング、両者のコラボレーションを打ち出すため、メーカーはこのようなカップリングにしたのだろう。アンナ・メイ・ウォン(Anna May Wong)の出演は「Drifting」のみ。どうせプリシラ・ディーン&トッド・ブラウニングを売りにするならアンナも出ている「Outside The Law〈法の外〉」(1920年)と組み合わせてくれればよかったのだが・・・そういう訳で、今回「White Tiger」の内容には触れていない。どちらとも 米Universal Pictures 配給のサイレント映画。
「Drifting」でアンナが演じるのは麻薬密売組織を牛耳るドクター・リーの愛娘ローズ・リー。インタータイトルに最も美しい存在と紹介されるものの、見た目の幼さはまだ残っている感じ。この時アンナ18歳、劇中のローズ・リーは15歳の役柄。アンナの知名度をグッと押し上げたのが1924年公開の「The Thief Of Bagdad〈バグダッドの盗賊〉」だとしたら「Drifting」はまさにブレイク目前の作品と言えよう。
【 仕 様 】
リージョン:A/B/C(日本のBDプレーヤーで再生可能)
本編:84分
【 画 質 】
100点中82点。
東欧に残存していた35mmフィルムをベースにレストアしているようだけどもマスターの損傷は激しかったらしく、状態の良いリールを継ぎ接ぎしたり現場の苦労が伺える。その甲斐もあって私みたいな映画にうるさくない人間が鑑賞するぶんにはノー・プロブレム。
「White Tiger」のほうはもっとノイズが多く、白黒画面のまま染色処理はされていない。
【 特典コンテンツ 】
プリシラ・ディーン&トッド・ブラウニング監督による、
Lost Film「The Exquisite Thief」のフラグメント(10分)
オーディオ・コメンタリー
【 ストーリー 】
キャシー・クック(プリシラ・ディーン)は上海で阿片の密売をしていて、商売敵ジュールズ・レピンと手を組み販路を広げようとするも、仕入れたはずの阿片が届かないトラブル発生。親友のモリーは阿片中毒に陥りベッドから動けない状態だし、キャリーはこんなヤバい仕事から足を洗ってモリーと一緒にアメリカへ帰ろうと決心する。その為には まとまった金が必要なのだが、競馬で一攫千金を狙って大敗。こうなると阿片の行方を突き止めるしか手立ては無く、キャシーは芥子の実の産地である杭州の村へ向かう。
村には廃坑再開のため単身派遣されてきたというアーサー・ジャーヴィス隊長がいたが、それは表向きの顔。彼は麻薬密売組織の巣窟を調査する政府のエージェントだった。キャシーは名前も職業も偽りジャーヴィスに接近、ところが麻薬密売業の邪魔でしかないこの男の人柄に惹かれてしまう。片や阿片の元締めドクター・リーもジャーヴィスの正体を怪しんでいる。ジュールズ・レピンはドクター・リーと合流、ジャーヴィスに賄賂の条件をちらつかせ、麻薬密売を見逃してくれるよう要求するものの、正義感の強いジャーヴィスは受け入れる訳がない。追い詰められた阿片栽培一味はついに暴動を起こし、村に襲いかかる。
キャシー・クック(プリシラ・ディーン)
ローズ・リー(アンナ・メイ・ウォン)
ジャーヴィス隊長は父ドクター・リーの敵でありながら、
ローズは彼に夢中。
アーサー・ジャーヴィス(マット・ムーア)
二人の女性に恋心を抱かれるほど、
カッコイイとも思えないのだが・・・。
常々ジャーヴィスを威嚇し、村から立ち退かせるべく、
阿片栽培一味が打ち鳴らしている気味の悪い太鼓。
残念ながらサイレント映画なので、その音を聞くことはできない。
暴徒が村を襲撃するクライマックスは盛り上がって良いのだが、よく考えたらジャーヴィスのみ隠密に殺してしまえばいいものを、わざわざ村ぐるみ襲う理由がわからん。そもそもこの映画、脚本にあった部分を編集でカットしてしまったのか、前後関係あやふやな箇所多し。例えば結末にてローズ・リーは死んでしまったっぽい。アンナ・メイ・ウォンの見せ場とはいえ(欠落した場面がある風でもなく)流れ弾を喰らったのか、火災で一酸化炭素中毒になったのか、視聴者は首を傾げつつ想像するしかない。昔の映画は独特の美しさが魅力な反面、説明を端折りすぎてるもの少なからず、痛し痒しである。
プリシラ・ディーンは当時売れっ子だったというけど、このキツイ顔立ちは好みじゃないなあ。それに他の作品ではどうだか知らないけれども、「Drifting」での彼女は豊満というより下半身がやたら重そうな女性に見える。中国が舞台ながらアメリカでセットを組んで撮影しているのはいつもの事。だとしたら村のシーンとか、ロー・バジェットでは済みそうにない制作費が掛けられている筈。私もそうだったが、初めて本作を観た人はてっきり中国で撮影したと思い込むに違いない。
(銀) 「Drifting」の出演者+スタッフ・クレジット、そしてインタータイトルの部分は原版の字体に限りなく寄せて再構築している。アンナ・メイ・ウォンの出演映画はLost Filmと云われているものが多く、残存はハッキリしていても未だソフト化されていない作品だらけ。本作ぐらいの画質なら十分OK、もっといろいろ観ることができると嬉しいのだが。